マグニチュード7.7の巨大地震に襲われたミャンマー。衛星データにもとづく国連開発計画(UNDP)のリモートセンシング分析によると倒壊した家屋は1万棟以上にのぼるという。ミャンマーは2021年2月に国軍がクーデターを起こし、それまで政権を担っていた国民民主連盟(NLD)を中心とする民主派勢力と少数民族武装勢力が国軍に抗戦して内戦状態にある。不安定な情勢は地震の救助活動や被災地支援に大きな影を落としている。日本国内ではミャンマー救援の募金活動が活発化しているが、募金が被災者のもとに届かずに軍に流れることを懸念する声も聞かれる。

品川区長が駐日ミャンマー大使に見舞金
東京都品川区は本庁舎など26カ所にミャンマー救援のための募金箱を設置した。区は区民から集めた寄付金を、日本赤十字を通じてミャンマーの救援活動や復興支援活動として寄付するという。また、それとは別に森澤恭子区長が駐日ミャンマー連邦共和国大使館を訪問してソー・ハン特命全権大使に見舞金として50万円を手渡した。品川区によると大使への見舞金の贈呈は全国の自治体で初めてだという。日本政府はミャンマー軍事政権を承認しておらず駐ミャンマー日本大使は不在のまま。一方で政府は相互窓口を維持するとの理由から軍事政権が派遣した現在のミャンマー駐日大使らを承認した経緯がある。品川区によるとミャンマー大使館が同区内にあることから大使館とは長年にわたり交流があるという。区は、見舞金は人道上の観点から行ったもので、大使からは謝辞とともに「地域の救助および復興支援に資するように活用する」との話があったと説明する。
しかし、ミャンマーの民主化に取り組む人たちは軍事政権に寄付金を渡すことは危険だと指摘する。ある日本人男性は「被災者支援として在日ミャンマー大使館を通じてミャンマー軍事政権に届けられたお金は民主派勢力を弾圧するための資金になる恐れがある」と指摘した。民主派勢力には軍が地震を利用してさらなる弾圧や民主派勢力の弱体化を狙っているとの警戒感が広がっている。ある在日ミャンマー人は「人命を優先するために民主派は軍に停戦を呼びかたが、軍は地震後も空爆を行っている。地震を内戦終結の好機と捉えている印象だ」と話した。
3月28日の地震発生後も軍が空爆を行っていると欧米メディアは報じており、日本の報道機関も現地独立系メディアの報道として地震後の軍の攻撃により130人以上が死亡していると伝えている。民主派勢力の国民統一政府(NUG)の駐日代表事務所の関係者によると、海外からの人道支援はミャンマー軍が支配している地域にとどまり、その他の地域では支援が行われていないのが実態だという。NUGは独自に被災状況を調査しており、4月7日時点の調査では死者が3550人、行方不明者や負傷者は5000人弱にのぼるとしている。
NUG駐日代表事務所らが被災地支援のクラファン
NUG駐日代表事務所は地震を受けて災害支援基金を立ち上げるとともに在日ミャンマー人団体と共同で被災地支援のためのクラウドファンディングを行っている。クラウドファンディングで集まったお金は被災した地域へ食料や飲料水、緊急物資を届けることに使うほか保険医療サービスや心理的なケア、自立支援などさまざまな支援活動を行う資金にするという。

また、日本で長年、ミャンマーの民主化運動に取り組んでいる在日ミャンマー人のアウン・ミャッ・ウィンさんは大阪を中心に被災地支援のための募金活動を行っている。「地震直後から仲間とともに募金箱を持って街頭募金を始めました。その様子をSNSで発信すると、瞬く間に日本にいるミャンマー人の若者から『私も参加したい』と連絡があり、今では約500人のミャンマー人が募金活動に参加しています」とアウンさん。「日本は人道支援にとどまらず地震対策のノウハウをミャンマーに伝えて欲しい。ミャンマー軍の非道さや内戦の現状、民主化に向けた運動にもっと関心をもって欲しい」と話した。集まったお金はこれまでの活動で培った信頼できるルートを通じてミャンマー現地に直接、届けるという。
■参考
https://www.tokyo-np.co.jp/article/396474
https://news.yahoo.co.jp/articles/dbe5c2444881048b2099e47be2605901fc648290